東京地方裁判所 昭和46年(借チ)2110号・昭46年(借チ)2120号 決定
〔主文〕1 (1)事件申立人、(2)事件相手方吉田敬一から(1)事件相手方、(2)事件申立人福島八重子に対し別紙目録記載の土地賃借権および同目録記載の建物を金三、五二一、〇〇〇円で売渡すことを命ずる。
2 右吉田敬一は右福島八重子に対し、福島八重子から前項の金員の支払を受けるのと引換に前項の建物につき所有権移転登記手続をせよ。
3 右福島八重子は右吉田敬一に対し、前項の所有権移転登記手続と引換に金三、五二一、〇〇〇円を支払え。
〔理由〕一 (1)事件申立人吉田敬一(以下申立人という)から別紙目録記載の土地(以下本件土地という)に関する同目録記載の賃借権の譲渡許可申立が適法になされたところ、右事件の相手方福島八重子(以下相手方という)から本件土地上に存する別紙目録記載の建物(以下本件建物という)および本件土地の賃借権譲受の申立が適法になされたので、借地法第九条の二第三項の規定により本件建物および本件土地賃借権の対価を定めて、相手方へこれらの譲渡を命ずべきである。
二 鑑定委員会の意見の要旨は「地主が買受ける場合の本件土地の借地権の対価は金三、二七一、〇〇〇円、建物の対価は金二五万円、合計金三、五二一、〇〇〇円とするのが相当である。すなわち、本件土地の更地価格は三、三平方米当り金二四三、〇〇〇円で借地権割合はその六五%、借地権価格は三、三平方米当り金一五七、九五〇円で合計金四七九万円(一、〇〇〇円未満切すて)となる。本件建物の価格は、原価法により再調達原価を推定し経過年数に応じた減価修正および観察減価修正をなすと金二五万円(一、〇〇〇円未満切すて)となる。ところで、本件資料によると申立人は本件土地の賃借権および本件建物を第三者に金四〇〇万円で譲渡を予定しているというのであり、かりに右譲渡がなされた場合には申立人は相手方に対しいわゆる譲渡承諾料として前記借地権価格の一〇%に当る金四七九、〇〇〇円を右譲渡代金から支払うべきであり、そうすると申立人の手取額は金三、五二一、〇〇〇円となる。そこで鑑定委員会としては申立人および相手方の利害を調整勘案して、地主が買受ける場合の借地権相当額を右金三、五二一、〇〇〇円から前記建物価格金二五万円を差引いた金三、二七一、〇〇〇円と決定した」というにある。
三 相手方代理人は、「本件土地の賃借権の残存期間は昭和四八年五月九日までで、相手方は期間満了とともに更新拒絶をなすつもりでありそのための正当事由も存する。しかるに鑑定意見書はこの点を無視しており不当である。」と主張する。しかしながら、本件全資料によるも期間満了時における相手方の更新拒絶のための正当事由の存否を予測することは不可能であり、右主張は採用できない。
四 鑑定委員会の借地権価格についての意見は、地価公示価格を規準とし取引事例比較法、近隣の標準的借地権割合等により客観的に算定された借地権価格を下まわり、現実の申立人の譲渡予定価格を基準として算定されたものであるが、申立代理人が右意見書につき特に意見はない旨述べていること等の事情も勘案し、当裁判所も鑑定委員会の算定した借地権および建物の対価を相当と認め、相手方が申立人に対し支払うべき譲渡代金を三、五二一、〇〇〇円と定める。
(河村直樹)
目録
(土地賃借権)
1 当事者
賃借人 申立人
賃貸人 相手方
2 目的土地
東京都葛飾区新小岩三丁目一〇三五番の二
宅地 六九〇、九〇平方米(二〇九、三六坪)のうち建物敷地一〇〇平方米(三〇、三三坪)、私道四一、八八平方米(一二、六七坪)
3 目的
非堅固建物所有
4 期間
昭和四八年五月一〇日まで
(建物)
東京都葛飾区新小岩三丁目一〇三五番地
家屋番号 七八二番二
木造瓦葺平家建居宅三二、二三平方米
(九、七五坪)